動脈硬化とは、血管の壁が厚くなって硬くなる状態のことです。正常な血管(動脈)は弾力性、柔軟性があり、臓器や筋肉などに必要な酸素や栄養をスムーズに供給します。しかし、コレステロールを過剰に摂取した状態が続くと、血液中のコレステロールの余分な在庫が増え、血管の壁の中に蓄積していきます。これが進行すると、血管(動脈)は弾力性を失い、硬く、もろくなってしまいます。このような状態が、動脈硬化です。

動脈硬化が進行すると、日本人の主な死因である心疾患(狭心症や心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳梗塞など)を引き起こすおそれがあります。
動脈硬化の進行を予防するためには、体内の悪玉のコレステロール(LDLコレステロール)を基準値以下に下げ、善玉のコレステロール(HDLコレステロール)を基準値以上に上げることが大切です。

2010年の厚生労働省の調査によると、現在、日本の死亡原因の第1位は悪性新生物(癌)、第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患です。
心筋梗塞や狭心症などを含む「心疾患」、脳梗塞を含む「脳血管疾患」を合わせると約4人に1人で、これは癌で亡くなる人の割合にほぼ匹敵します。心疾患や脳血管疾患は怖い病気なのです。

動脈硬化は、静かなる殺し屋(サイレント・キラー)とも言われています。それは「動脈硬化そのものには自覚症状がない」からなのです。人によっては、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞を起こして初めて動脈硬化に気づく、ということも…。最悪の場合、治療を受ける機会のないまま、亡くなる方もいらっしゃいます。
今の自分の血管の状態、つまり、動脈硬化の程度を知る目安としてコレステロールの値をチェックすることが、大切です。しかし、健康診断や人間ドックでコレステロールの異常を指摘されたときには、すでに動脈硬化が忍び寄っているかもしれません。

動脈硬化がもとで引き起こされる病気のことをまとめて「動脈硬化性疾患(どうみゃくこうかせいしっかん)」といいます。
動脈硬化は、余分な在庫となったコレステロールが増えすぎることで起こりますが、血管の壁の中に入り込んだコレステロールが、プラークというコブ(=コレステロールの塊)をつくり、それがどんどん大きくなると、血液の流れはどんどん悪くなっていきます。
プラークは大きくなるだけでなく、突然、破裂することもあり、その結果できた、血栓(血の塊)によって完全に血管が詰まります。それが、命にかかわる怖い病気、心筋梗塞や脳梗塞などで知られる「動脈硬化性疾患」なのです。

したがって、動脈硬化にならないよう、また、進行しないように日頃から注意をしておくことが大切です。なお、動脈硬化性疾患には、次のような種類があります。

これらは、動脈硬化を進行させる危険因子(特定の疾患になる可能性を増加させる原因となる要素)として知られています。あてはまる人は動脈硬化やそれによる病気になる可能性が高いため、要注意です。
脂質異常症とは「悪玉のLDLコレステロール値が高すぎる」、あるいは「善玉のHDLコレステロール値が低すぎる」などの状態をいいます。こうなると、コレステロールは血管の壁にどんどんたまり、動脈硬化が進行していきます。
糖尿病と脂質異常症の両方がある場合、動脈硬化がより進行しやすいと言われています。これは糖尿病患者さんの場合、血液中に過剰に存在する糖分そのものが血管の壁を傷つけるため、悪玉のLDLコレステロールが血管の壁の中に入り込みやすくなるためです。
高血圧症と脂質異常症の両方がある場合、動脈硬化がより進行しやすいと言われています。血圧が高いと、血管にかかる圧力が高くなり、血管のいちばん内側の膜がボロボロになります。高血圧の患者さんでは、悪玉のLDLコレステロールが血管の壁に侵入しやすくなるばかりか、血圧の上昇によってプラークが破れやすくなっています。
男性は45歳、女性は閉経後の55歳くらいを境に、動脈硬化による病気にかかりやすくなります。特に女性の場合、閉経によって、悪玉のLDLコレステロールを抑え、善玉のHDLコレステロールを増やす働きをしていた「女性ホルモン(エストロゲン)」の分泌量が減ってしまうため、動脈硬化が進行する危険性が高まります。
タバコの煙には、悪玉のLDLコレステロールを「極悪玉コレステロール」に変えてしまう、強力な酸化物質が含まれています。さらに喫煙は血管を収縮しやすくするため、動脈硬化と、それによる病気になる危険性を高めます。
動脈硬化、そして、その原因となる脂質異常症、糖尿病、高血圧には、何らかの遺伝が関係していると考えられています。このため、狭心症や心筋梗塞を起こした人が家族にいる方は、動脈硬化性の病気になる可能性が高くなります。
動脈硬化を予防するためには「脂質異常症の治療」が大切です。脂質異常症の治療としては、「食事や運動といった、生活習慣の改善」が基本になります。
医師が定めた「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)」では脂質異常症における「食事療法」の基本として“エネルギー量と栄養バランスを見直す”第一段階、“脂質異常症のタイプ別に食事内容を見直す”第二段階と、2段階に分けて行うことが推奨されています。


「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)」によると、普段の生活の中で体を動かす工夫をするとともに、それぞれの人に適した運動を行うことで、コレステロール値の改善などにつながると書かれてあります。
ぜひ、動脈硬化予防のために、ウォーキング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を中心に、積極的に体を動かしましょう。1日30分以上を週3回以上(できれば毎日)または、週180分以上の運動が目安です。


動脈硬化予防の基本は、食事や運動を見直して、毎日の生活習慣を改善することですが、良好なコレステロールバランスを目指していくときには、かかりつけ医の指導のもとで「薬物療法」を行うことも重要な選択肢の一つです。
脂質異常症の治療薬にはさまざまなものがあります。


悪玉のLDLコレステロールを下げるには、スタチン系と呼ばれる薬が多く処方されています。スタチン系薬剤は、病院で医師の診断と指導のもとで処方されるお薬です。医師の処方箋なしでは服薬することはできません。












